ミュージカル部
【ミュージカル部】
僕は高校3年生のとき
ミュージカル部に入った。
何故3年生になってから?
それには訳があります。
でも、顧問の先生からは、
『3年間やってきた奴よりウマい』
と言われた。
ダンスは3年間やってきた人たちの方が上手だったが、芝居に関しては自信があった。
僕は18歳の頃、芝居がしたくて
あるタレント事務所のオーディションを受けた。
大物俳優もいたプロダクションだった。
1次試験の書類審査は通り、
2次試験は名古屋の栄にあるビル内の会場で
芝居、朗読、ダンス、歌、面接
を受けた。
歌は、伴奏も何もなしで、いきなり
好きな曲を今ここで1曲歌ってくださいと言われたので僕は
「CHAGE and ASKA の
SAY YES を歌います!」
と言い、思いっきり歌った。
何故か自然と構えがASKAさんっぽくなっていた(笑)
緊張して声が出ないかと思っていたが、
調子がよかったのか
ビックリするぐらい伸びやかな声が出た!
歌い終わると、審査していた女性から
『あなた、どこかでバンドやってるの?』
と聞かれた。
バンドは何もやってなかった。
面接の時に
『君には東京のオーディションにも行ってもらうかも知れないからね』
と言われた。
後は後日郵送される合格発表を待つのみだった。
正直、合格するとは思っていなかった。
オーディション会場にはたくさんの人が受けにきていたし、みんなビックリするぐらい気合いが入っていたからだ。
会場の待合室で、他の人の上手い歌声が聴こえてきたり、面接の練習を一人でしている人、また、服装に気合いの入っている人がいたりと、オーディションの段階で個性豊だった。
僕にはこれといった特徴はなかった。
後日郵便受けに通知が来た。
分厚い大きな封筒だった。
封筒には
なんと合格通知と賞状。
契約に関しての書類等々入っていた。
僕は嬉しかった。
……が、
【東京】
という文字が頭から離れなかった。
そうか、いつかは東京に出て行かないと有名になれないし稼ぎもないといかんしなと思った。
僕には当時、彼女がいた。
彼女と離れたくなかった。
彼女に
合格したことと、東京のオーディションに行くかも知れないという電話をしてみた。
すると、記憶は定かではないが
「まぁ、私とは別れるしかないかもね」
というようなことを言われた。
僕は迷った挙句、彼女との交際続行を選んだ。
自分に強い意志と未来が分かっていたのならば彼女と別れてでも
プロダクションに入っていただろう。
考え方がまだ幼かったんだろうか。
そこで道は変わった。